夏練.1

 

  数ある五七の世界の作句の中で何が一番好きか?聞かれると俳句でも短歌でもなくこの古典の一吟であります。

 

   人に言えないほとけがあって秋の彼岸の回り道

 

 

  何回もこの都々逸を紹介したが、これほど日本人の心情を表した名吟はない。庶民的でわかりやすく曼珠沙華が咲き乱れるひなかの明るい中秋の田舎道を、昔愛した女の墓に家族に内緒で一人お参りに行く、という解釈が一番合うと思うのだが。ひょっとしたら夭折した隠し子かもしれないな。どちらも明るい風景の中に儚い哀愁と諦観があって、しみじみとした思いにさせてくれる。詩とはいかにも心を揺らすものか・・・。世界最短の詩形たった17音から26音、31音の中に豊かな余韻を感じる事のできるなんて、日本語っていいよな〜。