夏練.2

もう一吟。

 

  恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす

 

 お座敷都々逸の古典名吟。しかしこれは文芸の中でもとりわけ芸術性があるとは評価はされないだろう。俳句と標語ほどの違いはないにしても、この都々逸には芸術性よりも洒脱や粋そして艶っぽさという感覚の方で評価されているんではないかな。俳句は難しいがこんな俗っぽい都々逸を気軽に作吟すればそれは「ことのは」の豊かな遊びの世界に浸れるのである。

 

  三千世界のカラスを殺し 主と朝寝がしてみたい

 

 高杉晋作が愛妓おうのと座敷遊びした時にひねったと言われる都々逸だが、晋作の仏教観と倒幕などの藩務で忙殺されているほんのひとときの憩いの時であろう、その間合いがよく感じられるのである。俳句や短歌はうまく作ろうと思うからなかなかできないが、都々逸はそのまま7775にしてしまえばいいのである。