秋練.19

 

練.19

     諍いの熱冷む夜半に蚯蚓鳴く

                                    季語 蚯蚓鳴く

  歳時記には不思議な季語がある。「亀鳴く」「虎が雨」「八月大名」「虎落笛」 などまだまだたくさんある。

この蚯蚓鳴く。ミミズが鳴くのである。虫偏に丘、引く、と書いてみみずという漢字も面白いが、はてミミズはどんな鳴き声なのだろうか?これは秋の季語で残暑の昼間から秋の気配が濃厚になった夜分の一瞬の静寂を表す比喩の季語らしい。蚯蚓を好物の土竜は知っているがミミズの鳴き声なんか誰も聞いたことないだろう。亀鳴くもそうだ。日本人には自然を表す言葉には特別の才があるのかもしれぬ。いや漢文の古語の世界ではこのような比喩がたくさんあったような気がするが、その影響を受けているのかもしれないね。

 上の俳句の意味は、白熱した議論の後や、叱責の後、夫婦喧嘩などの後に酒をあおり、めっきり秋めいた窓の外のシンとした暗闇に気付いた時に詠じた句。