冬練.3

 

 

    猪の代わりに嵌った罠を解く小春

    いののかわりにはまったわなをとくこはる

     

         小春=初冬の季語 

 

 なんとまぁ、ワイヤバネ製の猪の罠に自分がかかってしまった、と言う全く大ボケのお話。くくり罠と言う代物だそうな。

茂木四国八十八ヶ所の大会を企画調査して最後に残った札所54番の所在捜索に茂木町大崎地区に再三訪れては草木の繁茂、または猪鹿対策のさくに阻まれ最後まで所在が突き止められなかった札所なのです。それが昨日とうとう鹿柵の入り口を発見し眼前に聳える悪所岳(標高506m)の杣道(そまみち)を探し登る事ひととき。例の如く磨崖とも言える崖のしたに小さな祠があり、やっとこさ発見しまして全茂木四国八十八ヶ所の所在を明らかにしました。

 さてその林道から小枝や落ち葉や雑草で歩きにくいその鹿柵の入り口の途中に、何やらまた蔓(つる)を絡めたのだろうランシューが絡まってしまったので足を振って落とそうとしたが、何かぐいぐいと右足シューズの甲の部分を締め付けてくる。よくみてみると何やらワイヤーがからんでいるではないか!とっさに猪の罠と直感して足を静かにした。騒げば騒ぐほど足が締め付けられ解くのが難しくなるのを知っていたからだ。左足でバネの部分を静かに押しやり無事に抜けたが、これが足首に絡んだら小さな怪我では済まなかっただろう。特にトラばさみのくくりわなでなくてほっとしたのだが。

 大抵この手の罠は周囲の木々に警告札がかけてあるのだろうが、こんなところに入り込む人間なんていないと言う前提でわなを仕掛けているものと思う。しかしこのような身近な山谷には動物対人間の小さな生存競争がごく普通に存在することに少しばかり自然に対する畏怖の念が湧くのである。