2023夏練.5

 

 

奥州きらめきマラソン.その4

 

           

       梅酸に渴を医してラン霧中

 

   ばいさんにかつをいやしてランむちゅう(霧の中)

 

              梅酸(梅の実)=梅雨の季語

 

 *霧は秋の季語だが、ここは梅雨の雨煙のことで秋の霧とは違う。また梅一字の場合は花として早春の季語になるが、梅の実は夏の季語だ。

 

 

 この「梅酸渇医」を見てピン時た人はかなりの吉川英治ファンか三国志好きに違いない。私にとって、「三国志」は物心ついて読書を始めた時以来の指針書であり、聖書でもあった。10代の頃に受験勉強そっちのけで明け方まで読み耽ったものだ。魏の曹操が劉備攻略の際、炎天下の遠征が続いて飢餓でこれ以上の自軍の兵の脱落を防ぐ意味で、あの山を越えれば梅の実がたわわになった林がある、そこに着けば梅の実で存分に渇きを潤せと叱咤した時の言葉であるらしい。

 ところでこの句は「梅酸に渇医(い)すランの梅雨晴れ間」の方が情景がしっくり行く。ただしこの句が浮かんだラン練時の天気は梅雨の強雨の真っ只中であります。かっぱを着込んでのペース走練で、やはり喉は渇くのである。ホームコースの彦山の山道階段に誰も収穫しない梅の実が無数に転がっている。今落ちたばかりの青い梅の実は、齧ると同時にそのまま梅干しにしたような塩辛さと青臭い独特の梅酸の香りが広がる。私はこの辛さと、青臭さがこの時期のお気に入りの一つだ。爽快感が広がるのである。尤も黄色く熟れ始めたものは、梅肉の塩辛さが味の薄い桃のような柔らかい果肉になる。この時のランは雨が小降りになって霧が出て来はじめの時で、霧が濃くなる中で梅を拾って齧っているとこの三国志の一節を思い出すのだった。

  

  さて、きらめきマラソン32km過ぎて簡易トイレの中で次々襲ってくる足の痙攣(攣り状態)に何分耐えていたのだろう。もう排泄のことなどどこかに消えてしまって、ひたすらじっとして痛さに我慢したり足を宥めていたり・・・。何とかパンツをずり上げトイレのドアを開けると、長蛇の列ができていて相当長くここにとどまっていたのがわかる。並んだ選手の顔が皆怒っているのだ。で、ロボット歩きをしながら手を洗う簡易洗面台にたどり着き、水を出そうと思ったらそこの洗面台、足漕ぎポンプだった・・・・。足でポンプを漕いだ瞬間、足の攣りが再度爆発した・・・・。もう嫌じゃ~~~。