秋練.5

 

 

                        元禄の銘ある墓は草莽に埋もれてひさし蝉声(せんせい)の中

 

 通勤ランの大音寺、大光寺、晧台寺の山中には墓を守る人もなく今日、盆になっても草の中にひっそりと無縁仏となっている墓が多数ある。中には遺骨を新しい墓所に移して子孫に供養されている幸運なご先祖もいらっしゃるだろうが、その無縁仏の墓はとても御大身や身分の高い墓の作りではない。ほとんどは百姓や一般の町人であったろう墓と推測されるのである。江戸中期から明治初期までの無縁仏がある山道が私の通勤路である。春は竹に侵食され今は草に埋もれそして秋には枯葉に埋もれて、ゆくゆくは墓石が倒れてしまい土の中に埋もれていってしまう運命にある。そこの墓に通れば必ず念仏を差し上げている。名もなきどこかのご先祖様、私でよければご冥福のお念仏を唱えさせていただきます。